安倍なつみが舞台から去っても、止まないコール。
その日会場には超満員の12000人。そして会場の外にはチケットが無くて入場できなかった人達が5000人いたと言われている。
お客を早く退場させるためか、場内の音楽がモーニング娘。のシングル『GO Girl 〜恋のヴィクトリー〜』のインストメタルへ切り替わる。
一瞬ひるむ会場のファンだが、なんと曲に合わせてコールが始まった。しかもBメロのPPPHは全てなっちコールという徹底ぶり。
そんなファンの声援を聞きながら私達は会場を後にした。

駅まで向う途中でも、時折発生する「なっちコール」。
卒業コンサートのテンションを保ちながら、一緒になってコールを送った。
駅に到着し、新横浜から名古屋へ向う最終列車に乗り、だんだん横浜を離れていくと、自然に友人との会話が途切れ、先程までの感動のコンサートが幻のように感じられてきた。
気が付くと、名古屋駅に到着していた。
私達は名古屋駅のプラットホームで岐阜に向う電車を待っていた。
深夜と言う事もあり、いつものような駅の賑やかな光景は見られず、ホームの人影もまばらで、そんな光景も私を現実の世界に引き戻す要因になっていた。
しばらくすると岐阜行きの電車が到着し、私達は乗り込んだ。
乗車する人があまり居なかったせいか、すんなり座席に座る事が出来、電車は私達を乗せ、地元岐阜駅へ向った。
車内は携帯でメールを打つ人や、読書する人、外の景色を眺めている人、人それぞれいろんな事をしていた。
私も疲れからか、襲ってくる睡魔と闘いながら窓の外の景色を眺めていた。そんな時、沈黙を破ったのが、友人が一言だった。
「あっ...雪が降っとる...。」
その言葉に導かれるように私が外の景色を良く見ると、白い雪がたしかに降っていた。
そして、その瞬間、私の目の前にコンサートの光景が映し出された。
雪景色の中を、一人の女性が歌を唄っている光景が...。

その日、横浜に雪が舞った....。

今日の出来事は、幻ではなく真実。
ステージのアーティスト、会場のファン、そして安倍なつみの心に宝物として残るのも真実である。

          END

続きは明日。エピローグにて。
ご購読ありがとうございました。
でもあとちょっとだけ続きます。
そしてモーニング娘。リーダー飯田圭織が、最後にメッセージを贈る。
「なっち卒業おめでとう,,,。」飯田は泣くのをこらえながら言った。その言葉に対して同様に涙目であるが、明るく答える安倍。
「ありがとう、かおり。」
安倍と飯田はモーニング娘。結成当時からのオリジナルメンバー。
そんなメンバーだからこそ言えるメッセージが続く。
「なっちとはさ、ホントにオーディションからの付き合いで...なっちを初めて見たとき、『可愛い子だな..この子絶対オーディション受かるんだろうな。』と思ってた...。初めて一緒に飛行機に乗ったり、一緒に東京タワー登って、最初の頃一緒に暮らしていたから、スーパーの安売り行って家計を節約したりしたよね。」
飯田は、当時の期待と不安だらけの日々を思い起こさせるが、それでいて懐かしい気分にさせるメッセージ。
「なっち、憶えてる?デビューの時に横浜アリーナを満杯にするようなビックなアーティストになろうって言ったよね。」
1998年2月11日にモーニング娘。はデビューイベントを横浜アリーナで行った。しかし当時会場に集まったのはキャパ1万2千人の会場に対して、半数の6千人。
飯田のメッセージはこの時に決意した言葉を表したものだった。
そして彼女は満杯の会場を見渡して言った。
「いっぱいだよ、横浜アリーナ....。」
「やったね!」安倍も会場を見渡し答えた。
そして飯田が..,、モーニング娘。のメンバーが、最後に贈るメッセージ。
「ソロとしてカッコいいアーティストになってね。これからも良きライバルでいようね。」
飯田はそう伝えると、安倍に抱きついた。
リーダーであるため、いつもはシッカリしている所を見せなくてはいけない飯田だが、今日は昔のカオリに戻っていた。
飯田は安倍の言葉に耳を傾けて頷き、名残惜しそうに彼女から離れた。

モーニング娘。メンバーをバックに、安倍なつみはステージ中央に立った。そして、ファンに向けた最後で最後のメッセージを贈る。
「これからも安倍なつみ、そしてがんばり続ける大好きなモーニング娘を皆さん、応援してください。」
会場からは12000人の「なっちコール」が起こる。
安倍のメッセージを受け止めたファンのコールがいつまでも鳴り止まない。
そんなコールの中、矢口が次の曲を紹介する。
「紺野、辻ちゃんを含めた15人で歌うのはこの曲で最後になります。
聞いてください。......ふるさと。」
矢口の曲紹介と共に、なつかしいイントロがながれる。
安倍がメイン、コーラスをメンバーが担当した曲、ふるさと。
故郷の母を思い起こさせる、やわらかい、そして暖かい曲。
安倍は最後にこの曲を選んだ.....。
曲が終盤に差し掛かる頃、メンバーが安倍のそばに集まり、包容を交わす。
その時、加護にも異変が起きていた。おとといまで風邪で寝込んでいた彼女にとって、残り少ない体力を悲しみが奪っていった。
舞台でふらつく彼女を吉澤が心配そうに支えた。
歌い終わり、安倍が力強く声を出す。
「モーニング娘。でした!どうもありがとう!!」
そしてモーニング娘。メンバーは舞台裏へ戻っていった。

彼女達が舞台を去ると、再び会場からは「なっちコール」が起こる。
そんな声援を切り裂くように今回のハロプロMC、まことと稲葉貴子が現れた。舞台裏で泣いていたのか、稲葉の目は真っ赤であったし、声も震えていた。そんな中、ハロプロコンサート最後の曲『でっかい宇宙に愛がある』を歌うため、彼女達は再びハロプロメンバーをステージへ招く登場MCを行った。
登場の前に、辻が舞台に出てこられないが、ステージ袖で見守っていることをMCのまことから告げられた。そして今日の出演者が登場した。
メロン記念日、前田有紀、松浦亜弥、ココナッツ娘。カントリー娘。、そして後藤真希。「最後まで応援ありがとう。」そういう彼女の声は少し涙声に聞こえた。その後、中澤裕子が登場した時も出て来た彼女は涙目だった。
間違いなく、舞台裏で2人が号泣していたのが手に取るようにわかった。中澤は涙を隠すように、次の曲を歌うための指定位置に立った。
その後、キッズが紹介されてから再び、モーニング娘。が舞台にたった。あらわれた途端に大きな「なっちコール」が会場全体に響き渡る。メンバーもいっしょになってコールを送っている。
安倍はその声援に負けないくらい大きな声で叫ぶ。
「ラストナンバーだからみんな一緒に歌いましょうね」そして曲のイントロがながれる。また元気に歌いだすメンバーだったが、矢口だけ感極まってしまい、踊る事も歌うことも出来ない。するとそばにいた中澤が矢口を声とダンスで励ましていた。
そしてもう一人、加護も限界がきていた。序盤までステージにいた彼女。しかし、悲しみには勝てずに舞台を降りてしまった。
そんな大混乱中、曲は終り、順番にメンバーがはけていく。
最後舞台に飯田、安倍、矢口、中澤が残ったところで、また一際大きい「なっちコール」が起きる。この時、舞台裏ではハプニングが起きていた。加護がステージから降りてしまった事実を知ったまことが、その事をファンに伝えるため、ステージに再び上がろうとしてスタッフに止められたのだ。今日はDVD撮影が行われており、ここでまことに登場されてしまうと、編集が大変な事になってしまうと言う、スタッフの制止だった。しかし、ファンの気持ちを考えるといても立っても居られなくなったまことは、ステージへと飛び出す。
そして加護がステージに出てこなくなった事実と、今は元気にステージ袖に居るということを告げ、最後に最高!という言葉を残し舞台を去っていった。まことの優しい気持ちに感動した。
いきなりのまことの登場で、少し静まり返った会場をメンバーがまた盛り上げる。「なーち!、なーち!、なーち!」と。
その声援は地鳴りとなり、最寄の新横浜の駅まで響いたと言う。
そんな大声援に、彼女は答えた。
「ホントに皆...みんな、みんな、みんな、どうもありがとうございました!!」
これが今日のコンサートで安倍なつみが最後にファンへ贈った言葉、メッセージである。
再び起こる大声援の中、彼女は卒業へ向ってステージを降りていった......。

          15話?最終回へ続く。
安倍が吉澤を抱きしめて、彼女へのメッセージを伝え終わった時、会場がざわめき始めた。皆の視線の先には、石川、矢口らに支えられている辻希美の姿があった。
迫り来る別れの悲しみは、彼女をもう一人では立つ事も、歩く事も出来ないくらいの状態にさせていた。
メンバーの手を借りて、安倍の前にやって来た彼女。
しかし、号泣状態の辻のマイクから聞こえるのは、彼女の嗚咽だけ。
「ヒック、ヒック、・・・。」
小さな体でマイクを抱えるように縮こまっているため、さらに小さく見える彼女。
そんな辻をメンバーは励まし、ようやく聞き取れる言葉が出てきた。
「ヒック、ヒック....お..めでとう...だいすき...」
ようやく出てきたのは、形式上の言葉だった。しかし、彼女の本心の言葉が次に出てきた。
「ヒック、ヒック、ヒック......いやだ、いやだ...やだよ〜...。
安倍の自宅のベッドルームには壁沿いに写真が張ってあるという。
その中で彼女が最も気に入っているのが、辻が悪ふざけで安倍の頬にキスをしているツーショットである。
ラジオ番組で辻の事を語る安倍は、とても優しい声になる。
彼女の声からは辻に対する愛情が感じられる。
「ヒック、ヒック...」メッセージを伝え終えた彼女からまだ、嗚咽は続いていた。
そんな辻に安倍は優しい笑顔で歩み寄り、「のの、よし!大丈夫、こっちおいで...。」と、声をかける。
メンバーに支えらている辻を彼女は抱きしめて、その耳元に語りかけた。その光景は、今日のコンサートのベストショットと言われる位、愛にあふれた感動のシーンだった。
安倍から離れた辻を舞台袖で休ませようと判断したスタッフが現れて、肩を組ませて舞台袖に移動しようとした。
しかし、女性であるメンバーが支えられ、動かせた辻の体を男性のスタッフがなかなか思うように動かせていない。よく見ると、辻は足を踏ん張り、ステージから退場させられない様に耐えていた。
彼女は一時でもこの舞台から、安倍のそばから離れたくなかったのだ。
辻が4期メンバーとしてモーニング娘。に入った頃、ハロープロジェクトでは各ユニットの補充作業が行われた。
加護と石川がタンポポに決まり、吉澤がプッチモニ。に決まった。
しかし辻には声がかからなかった。そんな中、辻は落ち込んでしまった。ライバルだった4期メンバーの中で自分だけが活躍の場をあたえられなかった事に。
そんな状況の辻を支えたのが、当時似た境遇にいた安倍なつみだった。
安倍の場合、辻が入る前からユニットで歌う機会がなく寂しい想いをしてきたが、彼女はそれを乗り越えてきた。だから、辻の気持ちが痛いほどわかるため、彼女は辻を支えた。そしていつしかメンバーも公認の仲良しコンビになっていった。
年間通してコンサート活動するモーニング娘。
実家から通う辻にとっても、メンバーと過ごす時間は家族よりも長く、かけがえの無い時間だったに違いない。そして安倍との絆は『甘えん坊』の辻にとっては血の繋がった実のお姉さんより強かったのだ。
辻が動かない事に焦ったスタッフは辻を持ち上げ、抱えてステージ袖まで連れていった。。
そんな辻を会場のファンと、ステージのメンバーは暖かく見送る。

石川梨華は心配そうな表情で見送っていたが、辻が舞台袖に消えると安倍がいる舞台に気持ちを切り替えた。
さっきまで辻の事を心配する余り、ステージに集中していなかった彼女だが、安倍の姿を見た途端涙が溢れてきた。
溢れる涙を拭うことなく、彼女は安倍にメッセージを伝える。
「安倍さん、卒業おめでとうございます。」
モーニング娘。で厳しいお姉さんと言われるのが飯田と矢口。やさしいお姉さんと呼ばれるのが安倍と石川。
石川は今後、安倍が担ってきたモーニング娘。メンバーの母親的存在を受け継いでいく事になるであろう彼女が安倍に贈った言葉は、「いつも笑顔でいられる娘。で居続けて行きます。ありがとうございました。」
これからモーニング娘。の中枢を担っていく決意を安倍に伝える言葉でもあった。
安倍はそんな石川を頼もしく見つめながら言葉を返す。
「ありがとう。」
そして二人は抱き合い、安倍は石川の耳元へメッセージを贈った。

モーニング娘。の中で’友情’という言葉を当てはめるなら、矢口真里と安倍なつみほどピッタリ来る2人はいないだろう。
矢口にとって安倍は親友である。もちろん、安倍にとっても矢口は親友である。2人はプライベートでも親交があり、矢口はよく悩みなどを安倍に打ち明けてきた。
笑顔で送ってやりたいと思っていた矢口だったが、既に悲しみで自分を保っている事が辛い状態であった。そんな中、矢口は懸命に想いを伝える。
「なっち卒業おめでとう。」
矢口の言葉に涙を浮かべながら安倍は明るく答える。
「ありがとう。」
矢口のメッセージは続く。「なっちとの思い出はいっぱいすぎて、なっちがいない楽屋や、なっちのいない曲とか、あんまり考えれないけど、....なっちの愛したモーニング娘。は、カオリとオイラのお姉さんで引っ張っていくから安心してください。」
矢口の頼もしいメッセージを頷きながら聞き、安倍は言葉を返した。
「たのむよ!」と。
そして、友人として安倍を見てきた矢口ならではの言葉で、メッセージを締めくくる。
「一人で悩み事があったら、まわりに...支えてくれるたくさんのファンの人や....応援してくれる皆や、モーニング娘。のメンバーがいる事を忘れないで下さい!」
その言葉を安倍は受け止めて、「ありがとう!」と言葉をかけた。そして小さな矢口の体を抱きしめて、彼女の耳元に矢口だけのメッセージを伝えた。
友情と言う言葉があるのなら、この2人にそれは当てはまる。
この瞬間、2人の友情は永遠のものになったのだから....。

       15話 最終回へ続く。
小川真琴は、モーニング娘。のメンバーに選ばれた当初、同期メンバーの中で歌やダンスがずば抜けて良かった。しかし、彼女は伸び悩んだ。他の5期メンバーが急激に成長していく中で、彼女は取り残されて行ってしまった。いつしか彼女から明るさが消えた。
そんな彼女を立ち直らせるキッカケを与えたのが、安倍の言葉だった。
小川の安倍へ送るメッセージにはそんな思いがある。
「安倍さん、卒業おめでとうございます。」小川はすでに涙声である。
「ありがとう、真琴。」安倍はやさしく言葉を返えした。
「私が壁にぶつかって悩んでいる時に安倍さんが言ってくれた、『試練はそれを乗り越える事が出来る人だけに与えられるんだよ』の言葉がすごく励みになりました。...今度、安倍さんに会った時に、『まこっちゃん成長したね。』と言われる様にがんばります。見ててください。」
いつも励ましてくれた安倍へ、小川が贈る感謝のメッセージである。
「がんばるんだよ。」安倍はそう言うと、小川を抱きしめる。そしてモーニング娘。の安倍なつみとして最後の励ましの言葉をを小川に伝える。

メッセージを伝える順番が後に来れば来るほど、押し寄せてくる壮絶な悲しみと長く戦わなくてはならない。そんな中、石川は一人のメンバーの異変に気がついた。彼女の前で順番を待っていた辻である。
メンバーのメッセージを聞きながら肩を震わせながら泣いているのだが、立っているのが辛そうに見えるくらい泣いている。
石川は心配になり、辻の様子を覗き込んだり、話し掛けたりしていた。
そして辻が倒れないように、彼女の体に手を添えていた。
そんな中、卒業式は後半に入る。

こういった場では、暫し名言と呼ばれる言葉が生まれる。
昨年5月、保田圭の卒業コンサートの時も加護亜依の「無理かもしれないけど卒業しないで欲しい...。」は後々名言として語らえた。
狙って出てくる言葉ではない。素直な気持ちが言葉で表す事が出来た時に出てくるのである。この日も加護は自分の気持ちを涙ながらに、素直に伝えた。
「卒業、おめでとう。...言いたい事一杯あるのに出てこない....。また..一緒に納豆焼きそば食べに行こうね!」
彼女の言葉に優しく頷く安倍。
「あの,,,言えなかったんだけど、ずっと憧れの人でした...。」
ものまねや面白いことをテレビの画面では率先して披露する加護。
しかし、意外なことに彼女は恥ずかしがり屋でもある。
最後の最後でやっと言えた言葉だった...。
「大好き!」そう叫ぶと、彼女は安倍に抱きつく。
安倍はやさしく包み込み、加護の耳元へ顔を近づけて、マイクを通さない、二人だけしか知る事はないメッセージを送った。
加護は子供のように泣きながら頷くだけだった。

安倍の前に立った一人のメンバーを見て、彼女は思わずこう言った。
「おっ!よっちゃん、かっこいいね!!」
彼女の目の前に、金髪をバックにまとめた、美少年と見間違う男前メンバー、吉澤ひとみがいた。
私は彼女の表情を見て少し驚いた。
彼女は涙を浮かべていたのだ。
吉澤がモーニング娘。のメンバーになって泣いたのは、私の記憶では
平成13年4月15日大阪城ホールで行われた、中澤裕子の卒業コンサート以来であったと思う。
後藤真希、保田圭の卒業の時も笑顔で送り出していた吉澤。
しかし、今日はそれが出来なかった、彼女の中の本心がそれをさせなかったのかもしれない。
吉澤は、泣きながらも懸命にメッセージを伝える。
「安倍さん卒業おめでとうございます。...言葉じゃ言えないんだけど...安倍さんの毎日の姿を見て、一杯勉強になったし、がんばろうと思ったし、これからもそんな....安倍さんが大好きです。がんばってください!!」
時折、声を詰まらせながらも気持ちを伝え切った吉澤。
そんな彼女に安倍も感謝の気持ちを伝える。「ありがとう!」
涙は浮かべているが、満面の笑顔の安倍。その笑顔につられる様に吉澤の表情に明るさが戻っていた。

        14話へ続く。
6期メンバーのトリを飾るのは藤本美貴。
普段の言動などで、冷静沈着なイメージがある彼女。
今日の表情からも精神状態が見えない。
しかし、安倍と向き合い、メッセージを伝えている彼女からは、明らかに動揺の様子が見られた。
「はい、え〜と 美貴はですね...」
一見、普段どおりの藤本の喋りに聞こえるが、彼女は安倍を目の前にして、明らかに動揺していた。
藤本以外のメンバーは、必ずメッセージの頭に『卒業おめでとう』という言葉を添えていたが、彼女は言わなかった。いや、言うのを忘れていたのだと思われる。
自分の想いを全て伝えようとするあまり、それが焦りとなって伝えるはずの言葉が抜けてしまったと思われる。藤本もモーニング娘。のメンバーである。
藤本美貴のメッセージは続く。
「最初入ったときに、なかなか楽しむキッカケが掴めなくて、あんまりお話が出来なかったんですけど...どんどん話すうちにすごく楽しくて、なんかな〜...なんだろな..いつも笑ってて、すごいなんか、どんどん安倍さんが大好きになっていったので、これからソロになっても頑張って下さい。そして、美貴の事を見ててください。
藤本の目に涙は無かったが、表情は強張っていた。
そんな藤本に安倍は優しく声をかける。「がんばるんだよ。見てるからね。ありがとう。」
そう言うと、安倍は藤本を抱き寄せた。そして耳元へメッセージを伝える。
安倍からのメッセージを聞いている藤本の瞳から涙が零れ落ちた...。

新垣里沙はモーニング娘。が大好きで娘。に入った女の子である。
入る前はコンサートにもよく行っていて、生写真なども良く買っていたという。メンバーの中でも特に安倍の大ファンであった彼女。
まさかメンバーとして安倍の卒業を見送る事になるとは、人生は解らない。
会場のファンの気持ちを一番知っているのは、実は新垣ではないかと思う。
すでに泣いていた新垣、そんな彼女のメッセージ。
「安倍さん、ご卒業おめでとうございます。」
新垣の言葉に安倍は微笑みながら答えた。
「ありがとう!」
「安倍さんが大好きで!憧れて入ったモーニング娘。で、これからも...これからも頑張るので、いろいろまたアドバイスしてください。....大好きです!」
「ありがとう。」安倍は新垣の気持ちをしっかり受け止めて言葉を返す。そして新垣を抱きしめて、彼女だけへのメッセージを耳元へささやく。
大好きな安倍からのメッセージを黙って頷きながら聴き入る新垣がそこにいた。

「ご卒業おめでとうございます。」一際大きな声が会場に響き渡る。
高橋愛が安倍に送るメッセージ。
「安倍さんはとても強くて、すごく私も強くならないと思って、いっぱい勉強になるんですよ...。私も安倍さんに負けないくらい頑張りますから!はい、訛りも直しますから!」
安倍は笑いながら答える。「お互いにね!」
そして高橋は涙目で安倍を見つめ、「これからも安倍さんを応援し続けますから...娘。を愛し続けてください!!
安倍は即答で答える。「うん、大好きよ!」
「大好き!!!」高橋はそう叫ぶと、安倍に飛びつく。
安倍も高橋を包み込むように抱きしめ、耳元へ言葉をささやく。
安倍に抱かれながら号泣する高橋。いつまでも高橋は安倍から離れようとはしなかった。彼女の最初で最後のわがままだったのかも知れない。

              13話へ続く。
飯田圭織は手紙を渡すと、メンバーが並ぶ列の最後尾へ向った。と同時に田中れいなが安倍の前に立った。
田中の表情は少し強張っているように見えた。トップバッターと言う事で少し緊張してるのかも知れない。
そんな表情のまま彼女は想いを伝える。
「安倍さん、卒業おめでとうございます。」
その言葉を安倍は最高の笑顔で受け止め、言葉を返す。
「ありがとう。」
その言葉を聞き、少し表情が和らぐ田中。彼女のメッセージは続く。
「車の中で二人で話した時に、がんばっている田中が好き!と言ってくれた事がすごい思い出に残ってて、すごい、もっと!もっと!がんばろうと思いました。これからも、いっぱい見守っててください。」
田中はモーニング娘。最年少とは思えないほど、しっかりとした口調で泣かないでメッセージを伝えた。
安倍は真剣な表情になり、「ちゃんと自信持ってがんばるんだよ。」と言葉をかけた。
握手をし、去ろうとした田中を安倍は抱きしめた。そして耳元で何かささやく....。マイクを通さないで、安倍から田中だけへのメッセージが送られた。その言葉を聞いた瞬間、田中の目から大粒の涙がこぼれた。安倍がどんなメッセージを田中に送ったのか、ステージの二人以外知る者はいない。しかし、田中の感涙の表情を見れば、どれだけ素晴らしい言葉が送られたのか想像できる。
安倍から離れても、田中は肩を震わせうつむき泣いていた。

続いては、道重さゆみが安倍にメッセージを伝える。
「安倍さん、卒業おめでとうございます。私は安倍さんの笑顔が大好きです! だから!これからも、ずっと笑顔でいてください..。」
道重のメッセージを満面の笑みで聞いていた安倍は、やさしく言葉を返す。「重さんの笑顔もかわいいよ。」
その言葉を聞き、道重の表情は崩れ、泣き出す。
しかし、安倍に想いを伝えたいと言う気持ちが、声になる。
「こ...今度、一緒にプリクラとって下さい....。」
いっぱい伝えたい言葉があったのかもしれない。しかし、今日はここまでが精一杯だった。
「うん、撮りましょうね。」道重の想いを受け取った安倍の目にも涙が溢れて、声も上ずっていた。
そして、田中の時と同様に道重とも抱き合い、彼女の耳元へ、安倍から道重へだけのメッセージを送った。

亀井絵里はすでに泣いていた。しかし、安倍へメッセージを伝えるため、必死に喋りだす。
「安倍さん、卒業おめでとうございます。 .....安倍さんには....本当にいろんな事を教えてもらったし、...怒られたし、...でもいっぱい褒めてもらえたし...いろいろ話も出来たし...。」
亀井と安倍は同じさくら組であった。さくら組メンバー唯一の新人6期メンバーという事で、他の6期メンバーと比較しても、一緒にいる時間が長かった。卒業を控えていた安倍は亀井に早く一人前になって欲しいと願い、時に厳しく、時に優しく指導した。
彼女のメッセージは続く。
「今度、安倍さんがジャージを買いに行く時、一緒に絵里も連れてってください。」
安倍は彼女のメッセージに対し、「はい....。」と優しく頷いた。
そして彼女を抱きしめ、皆と同じ様に耳元に安倍から亀井だけへのメッセージを伝えた。

              12話へ続く。
歌い終えると、彼女の頬をまた涙がつたう。
この光景を目に焼き付けるように、会場全体を見渡す。
「どうもありがとう。」彼女はそういい残すと、再びメインステージへ向った。ここから本当の卒業式が始る。
花道を渡り終えた彼女が、再びステージへ戻った時、そこには安倍に卒業メッセージを伝えるためにステージに立った、モーニング娘。のメンバーの姿があった。
一人一人、想いを伝えるために一列に並んだメンバー。先頭には花束を抱えたリーダー飯田圭織の姿があった。
安倍は笑顔を浮かべながら向き合う。
飯田は涙をこらえて言った。「なっち、卒業おめでとう。」
安倍は笑顔で返す。「ありがとう」
そして花束を安倍に渡す。
安倍は大切そうにその花束を抱える。
そして、最初のメッセージを伝えるため、飯田は一枚の手紙を取り出す。「まずは、風邪でこれなかった紺野からお手紙が届いてます。」
飯田はそう言うと、紺野が書いた手紙を読み始めた。
「安倍さんへ 卒業おめでとうございます。そして今日ステージに立てなくてゴメンなさい。   安倍さんとの思い出、すごく心に残っている事は、5期メンバーが入って間もない頃、歌やダンスが上手く行かなくて悩んでいる時に、私達4人に手紙をくれ、励ましてくれた事です。
これからも素敵な安倍さんでいてください。私は早く風邪を治します。」
紺野あさ美は安倍なつみと同郷の北海道出身である。
だから、故郷を離れ住み慣れない都会で暮らす彼女に共感し、色々アドバイスを送り、紺野もまた同郷の先輩に懐かしい故郷を感じていた。

手紙を読み終えた飯田から手紙を受け取ると、「紺野、早く良くなるんだよ。」やさしく語りかけ、手紙を胸に当てた。安倍の言葉は紺野に届いただろう....。

             11話へ続く。
安倍なつみは卒業コンサート後の会見で、記者の「モーニング娘。6年間の中で一番の思い出は?」という質問に対し、彼女はこう答えている。「今日です!」と。

彼女の目に映ったのは、無数の白い光、故郷室蘭を思い起こさせるような雪景色である。会場に集まった12000人の温かい光でもあった。

私は見ていた。
数分前までは色取り取りの光が揺れていた会場を唖然と見つめていた私。しかし、時間の経過とともに、まるで草原に雪が降り積もる様に会場が白く染まり始め、気が付くと辺り一面白い光で覆われていた。
想像以上のインパクト。光の一部になっている自分に誇りを感じた。

彼女の目には、白い無数の光が映っていた。しかし、その瞳は次第に滲んできて、それは涙となり頬を伝って落ちた。
メッセージを伝えるはずのマイクから聞こえるのは、彼女のすすり泣きだけである。彼女は手で顔を覆い、泣いていた。
会場から地鳴りの様に響く声援が起こる。「なーち!、なーち!、なーち!」彼女はその声援に支えられる様に、花道を歩く。
ファンに近い場所でメッセージを伝えるために作られた、花道の先にある小さなステージへ向っている。白い光の中を歩く彼女を見ていると、
それはまるで幻想的な1枚の絵を見ているようだった。
そして安倍なつみはファンに最後のメッセージを伝える場所に来た。
彼女は涙をこらえ、メッセージを伝え始める。「...ありがとう...白いよ..びっくりした...。」
安倍が声を発すると、先程までの大声援が嘘みたいに静まり返る。そこから彼女の言葉を一言でも聞き逃してなるまいという雰囲気を感じる。
「室蘭から出て来た私が、まさか..こんな温かい皆さんに囲まれたステージに立てるなんて...とっても幸せです。」
彼女は優しい笑顔で、ゆっくりとメッセージを伝えていく。
「これからもソロの安倍なつみ、そして頑張り続けるモーニング娘。、キラキラのハロプロを皆さん!応援してください」
彼女はメッセージを伝え終えた。すると会場から歓声が起こる。
彼女のメッセージが、会場全ての人に伝わった瞬間である。
メッセージを伝え終わると同時に、彼女のソロナンバー『22歳のわたし』のイントロが流れる。その時、安倍の表情が変わる。泣き顔が引き締まった表情に変わった。
いままで号泣していたのが信じられないくらい、彼女は完璧に歌っている。ファンは彼女の歌声に合わせ、白いサイリウムを揺らす。
その時、歌っている彼女の頭上から白いものが落ちてきた。それは雪のように見えた。
あきらかにファンが企画した白いサイリウム企画にあわせた演出で有る事が想像できた。
安倍なつみを最高の思い出とともに送り出してあげたいファンとスタッフの気持ちが最高の形で結びついた演出であった。

その日、横浜に雪が舞った...。その雪は、安倍なつみを愛しているファンとスタッフが降らせた雪だった....。

                10話へ続く。明日の10時頃予定
ステージでは歌い終えた松浦亜弥とハロプロキッズが、次の出番のモーニング娘。を紹介し、ステージは暗転。瞬く間に明るくなったと思うと、ステージには14人のモーニング娘。が立っていた。そしてそのまま彼女達の新曲、そう!安倍なつみがいるモーニング娘。では最後の曲になる、『愛あらばIT’S ALL RIGHT』のイントロが流れ出す。笑顔を振りまきながら踊りだす。そして、Aメロ 加護のソロパートでこの曲は始る。
淡いピンクや、ブルーのジャケットを羽織った彼女達。とても爽やかな印象だ。曲はBメロに入り、安倍のパートになった時会場からの大コール、コンサート会場ではおなじみPPPHが起こる。会場の横浜アリーナがコールが起こるたび、地響きが起こった。
安倍の卒業の花道を飾るには最高の曲だと感じる。
一曲目を歌い終えると、メンバーはステージに整列。MCが始る。
その中で矢口が気持ちは15人であると伝える。
会場からは病床で悔し涙を流しているであろう紺野へ向って大声援をおくった。
元気なMCが続くき、最後に登場は 安倍なつみ。
会場からは割れんばかりの声援が送られる。
彼女はこのコンサートに対する意気込みを伝えると、モーニング娘。は次曲の準備に入る。そんな中、「流れてきたイントロは、激しい振りが特徴のロックナンバー『シャボン玉』である。
会場全体曲のリズムに合わせてタテノリ状態!
この曲では6期メンバーの田中れいながセンターポジションと数多くのソロパートが与えれれている。モーニング娘。新時代到来を予感させた1曲でもある。
ノリノリのステージの後、彼女達は衣装チェンジで一瞬ステージを掃ける。そしてすぐさま再登場して3曲目の『ザ☆ピ〜ス!』、アンコール前のラストナンバー『そうだ!We’re ALIVE』を歌い切った。
涙はなく、爽やかにそして楽しく歌い切った。
次のアンコールに備えるため、彼女達は手を振りながらステージを後にした。そうである、次からが卒業コンサートの本番である。
会場からは 「なーち! なーち!」と早くもアンコールを表すコールが起こる。私は座席に座り、カバンの中から新しいサイリウムを2本取り出した。そして折り曲げて発光させた。そこからは綺麗な純白の光が輝いていた。
いよいよアンコール、なっちの再登場の時、会場は白いサイリウム1色になる!そんな光景を期待しながら私は座席を立ち上がり、スタンド席から覗き込むように会場を眺めた。 
「え!?」私は思わず驚きの言葉を発した。
白いサイリウムで白く染まっているはずの会場は、完全に白くはなかった。一部分には白い光が見えるが、ほとんどの場所はライブ中の光景と変わらない、緑や黄色、ピンクのサイリウムが振られていた。
コンサート前感じていた不安、「このコンサートはモーニング娘。単独のライブではないから揃わないかも?」と言う不安が現実のものになってしまったか?私はしばし唖然としていた。
そんな中、舞台裏では安倍が再登場を準備をしていた。
再登場に備え、最高を歌を披露するために気合を入れていた。
会場から割れんばかりに響く「なっち」コールは舞台裏の彼女の耳にも届いていた。
マイクを握り締めた彼女は、スタッフの指示を受け、ステージに現れた。会場からはコールを遮る大声援!そんな中、ステージに立った彼女が見たものは.....。
                    9話へ続く。

9話は深夜0時過ぎに書きます。
中澤裕子が新曲『元気のない日の子守歌』を歌っている時、私は座席からアリーナ全体を見渡した。
私達がいる座席は、ステージのほぼ真横の位置にあるスタンド席で、アリーナ席の人に比べればステージのアーティストが小さく見えるが、会場を見渡すには最高の座席でもあった。
今は色とりどりの光が見える客席が、アンコールの時に一面真っ白に染まる光景を想像していた。
中澤が歌い終えると、続いて メロン記念日の登場である。
ハロープロジェクト系で、最も熱く激しいライブを行う彼女たち。
今夜も『MIDARA摩天楼』『かわいい彼』2曲を披露し、文字通り激しいステージを見せてくれた。
そんな激しいステージを今度はキュートに彩る女の子が登場。
いまやトップアイドルの地位を確立した あややこと、松浦亜弥の登場である。待ってましたとばかりに、ファンのボルテージが上がる。
新曲『奇跡の香りダンス』は本人出演のCMで流れている事もあり、曲に合わせて会場はノリノリになった。
そんな曲の後は、失恋を唄ったバラード『THE LAST NIGHT』。
先程までのノリが嘘の様に静かに聴き入る会場のファン。
しかし次の曲のイントロが始ると、またテンションを取り戻す。
激しいロックナンバー『Good bye 夏男』。松浦はキッズを従えて全速力で花道の通路を激走!花道の最先端ステージで激しいダンスと歌を披露した。
私は2年前、彼女のライブに行った事がある。その時はファーストツアーということもあり、ただ歌っているだけ、お客さんが勝手に盛り上がってくれるだけのライブだった。しかし、今の松浦はライブで呼吸できるようになった。自分から積極的にお客さんをあおれるようになった。
ライブはステージのアーティストと、客席のオーディエンスの共同作業で最高といわれるステージが完成する。今の松浦にはそれが出来るようになった。昨年のツアー『ね〜え』の曲の中で、♪あなたがすきだからよ〜 の部分をファンは ♪あややがスキだからよ〜 と変えてコールする。松浦も途中から歌詞を変えて ♪みんなが好きだからよ〜 と歌っている。松浦亜弥は最高のアーティストに着実に成長している。
そして会場の熱気は最高潮を迎えた中、今夜最後に登場するのは、主役でもある モーニング娘。だ!
安倍なつみ、モーニング娘。として最後のステージが今始った。

                   8話へ続く。
後藤真希の熱いステージの後を引き継いだのは、ハロープロジェクト最年少ユニット あぁ!である。モーニング娘。の田中れいなと、ハロプロキッズから鈴木愛理と夏焼雅が参加している。
しっとりとした曲調のデビューシングル『First Kiss』を歌っている。難しいダンスもあるこの曲ではあるが、息のあったところを見せてくれる。センターの鈴木愛理はモーニング娘。矢口よりも体は小さい。しかし機敏に踊る姿は、小ささを感じさせない堂々としたものだった。
そして、あぁ!の後に登場したのは カントリー娘。に紺野と藤本(モーニング娘。)である。曲は『先輩〜LOVE AGEIN〜』で、これも切ない歌である。紺野が今日のコンサートに欠席しているため、彼女のパートをカントリー娘。の、みうなが担当した。
モーニング娘。のコンサートにゲストで帯同する事が多いカントリー娘。安倍の卒業は彼女達にとっても寂しい出来事だったに違いない。
そんな卒業コンサートではあるが、モーニング娘。の新旧メンバー以外で、ずっと裏で卒業を見送ってきたグループもいる。
次に登場したココナッツ娘。である。
彼女達は1期メンバー福田明日香から、今日の安倍まで全ての卒業コンサートになんらかの形で参加していた。そう、アヤカとミカの二人は舞台裏で卒業式を毎回見てきた。そして一緒に泣いてきた。
ココナッツ娘。の二人は、モーニング娘。にとってメンバー以外で思い出を共有出来る大切な仲間である。
今日ココナッツ娘。は稲葉貴子と一緒に、初代シャッフルで登場し、黄色5の『黄色いお空でBOOM BOOOM BOOM』を歌った。
懐かしさで数年前の映像が蘇ってきた。
懐かしいナンバーの次は、ハロプロ系唯一の演歌、前田有紀の登場である。曲は『さらさらの川』。
以前は休憩タイムと言われていた彼女の登場であったが、今では立派に会場を盛り上げていた。透き通る彼女の歌声は本当に癒される。
そして癒しのナンバー続きで、飯田圭織が舞台に立つ。
歌うのは飯田圭織ソロデビュー初のシングル『エーゲ海に抱かれて』。
癒し系の楽曲を展開する地中海レーベルリリースということで、どんな曲調になるかと思っていたが、聴いてみるとポップス風のメロディーで
これなら受け入れられるかなと感じた。彼女の卒業も近い将来考えられるので、この曲が自信を深める一曲になってくれたら良いと思う。
静かな曲が続いたあとは元気な曲が続く。
花道の最先端のステージに登場したのは ZYXである。
モーニング娘。の矢口真里、ハロプロキッズの梅田えりか、嗣永桃子、清水佐記、矢島舞美、村上愛の6人グループである。
彼女達は2ndシングルの『白いTOKYO』を熱唱。
続いては元祖チビッコユニット、ミニモニ。ピンクの衣装をまとった彼女達は、ミニモニ。らしからぬ新曲『CRAZY ABOUT YOU』を披露。すっかりミニモニ。に馴染んでいる高橋がそこにいた。5期メンバーの中で身長が一番低くなってしまった彼女を見ると、つんく♂には先見の目があるのだと感心する。
安倍なつみのモーニング娘。として最後のコンサート、Hello!Project2004Winter。次の中澤裕子の登場で中盤を迎える。

                  7話へ続く。
※今後、ネタバレの内容が濃くなってきます。特に各メンバーの卒業コメントはテレビなどでは放送されなかった部分も書き込んで行きますので、知りたくない方は注意してください。
巨大なモニターに映し出されたオープニング映像は、今回の出演者を紹介していった。そんな中、安倍なつみがモニターに映し出されると、会場からは一際高い声援が飛んだ。
そして、モニターはハロープロジェクトコンサートのトップバッターであるモーニング娘。おとめ組とさくら組を映し出した。
それと同時に会場が暗転し、舞台に光が集まった。その光の先に、おとめ組のメンバーがスタンバイしていた。
軽快なイントロと同時に、彼女たちが踊り出す。軽快なアップテンポナンバーである、おとめ組のデビューシングル『愛の園〜Touch My Heart !』がオープニングを飾る。いつに無く、力強いダンスを見せるおとめ組。その中でも田中れいなの歌唱力が彼女の歌声を聞くたびに上がっているのを感じる。5期メンバーの高橋愛に続く即戦力娘。の誕生である。
激しいナンバーの後に続くのは対照的なバラード、さくら組のこれまたデビュー曲『晴れ雨のちスキ...。』である。
さくら組には安倍が所属していて彼女がステージに現れると、一際大きい歓声が上がった。
安倍なつみは今日、モーニング娘。を卒業するがそれは同時にさくら組を卒業する事も表すので、さくら組のメンバーは安倍と歌うのはこの場が最後のステージになるのである。
それを察しているのだろうか、メンバーの表情は一様に暗く感じた。特に高橋は今にも泣き出しそうな表情をしていた。
しかし、彼女達はしっかりと気持ちを込めて歌い切った。普段聞いても心揺さぶられる曲なのに、今日はなぜか痛いほど心に響いていた。
そんな感傷に浸る間もなく、次のナンバーのイントロが流れる。
モーニング娘。の元気な曲、『Go Girl 〜恋のヴィクトリー〜』である。この曲は単調なリズムなのでとてもノリやすく、楽しい。
先ほどまでの悲しい雰囲気を一気に吹っ飛ばしてくれる歌である。
元気よく動き回る矢口真里が印象的であった。彼女は先々日のテレビの生放送音楽番組を風邪で休んでいた。そんな経緯もあり、今日の公演に元気な姿で出演するのかファンはヤキモキしていた。
しかし、今私達の目の前で踊っている矢口は、いつもの元気な矢口であった。
オープニングから3連続で曲が続いた所で、今日の出演者の紹介をするため、ステージにハロプロメンバーが総登場した。
ステージの端から端まで並んだメンバー、総勢40名近くいる。
ハロープロジェクトと言う組織も大きくなったもんだと、改めて実感する。
各グループや出演者の紹介の中、モーニング娘。リーダー飯田圭織から、メンバーである辻希美、加護亜依の今夏ハロプロコンサートでの卒業と、矢口から二人での新ユニット結成が報告される。会場からは辻と加護二人の今後の活躍に期待する声援が飛ぶ。
そんな発表の後、ハロプロコンサート怒涛のラッシュが始った!
再開後のトップバッターは後藤真希。
彼女の1曲目は『うわさのSEXY GUY』。ごっちんコールが会場を席巻する。そのコールに答えるかのように彼女は激しく踊る。
そんな流れの中で、次は『抱いてよ!PLEASE GO ON』。彼女の振り上げる拳に合わせて会場のオーディエンスもコールと拳を振り上げた。
曲の終りとともに彼女は一旦ステージから掃け、衣装を変えて登場!
新曲『原色GAL派手に行くべ!』バックダンサーにハロプロキッズを従えて花道を激走した。目の前で歌う後藤真希にファンの興奮は最高潮に達した。
そんな興奮の中、彼女のステージは終わった。

                  6話へ続く。
駅へ戻る途中、私達は数時間前とは違った駅前の光景を目にする。
チケットを求める人達は相変わらず居たが、その人達に紛れて声をかけながら、なにかを配っている人達がそこには居た。
なにを配っているのかよく見てみると、それはサイリウムであることが判った。それも白色のサイリュームである。
私は以前にも似た光景を見たことがあった。昨年の5月埼玉で行われたモーニング娘。保田圭の卒業コンサートである。
その時も、駅前で赤いサイリウムを配っている人達がいた。
ネットをしている人達の間では有名なサイリューム企画だが、インターネットをしていない人達にとっては寝耳に水の話である。コンサートに行く人達全てがインターネットでその情報を知っている可能性は無く、サイリウムを配ったり、声を掛けたりする努力が企画成功へ結びついてくるのである。彼らの尽力に脱帽した。
私達は少し早い夕食を取り、近くの家電量販店で時間をつぶした。
そして気が付くと時刻は午後5時を少し過ぎていた。今回は入場に少し時間が掛かるという情報があったので、私達は会場へ向かった。
横浜アリーナ周辺は人で一杯だった。
交通整備をする警察官が慌ただしく動き、コンサート直前の模様を収めるため各テレビ局のカメラも多く集まっていた。中にはファンにコンサート前の心境を聞いて回っているテレビ局もいた。
今日の私達の座席はスタンド席最前列であった。
前回来たときもスタンド席で、会場の裏手から入場したので、今回も同じだろうと思い裏手に回ったが、そこには人の気配が無かった。
近くに居る係員にたずねると、今回は全て入場者は正面ゲートから入場してもらうという事だった。
数日前、テレビでテロ組織アルカイダが、自衛隊をイラクに派遣したら日本にテロ攻撃を行うという声明を発表したというニュースを思い出した。今日の入場口の限定はこういった背景もあるのでは無いかと思った。しかもどうやらかなり厳しいボディーチェックがあるらしい。
仕方がないので、私達は正面ゲートへ向かい開場を待った。まわりは既に人であふれていた。
寒い中震えながら開場をまっていると、係員の拡張マイクから驚くべき情報が聞こえた。「モーニング娘。の紺野あさ美は風邪による高熱のため、今日の公演を休みます。」という内容であった。
安倍なつみのモーニング娘。最後の公演に一緒に舞台に立てなかった彼女の無念を考えると、心苦しさを感じた。
そんな中、ようやく開場、入場が始まった。しかし、なかなか列は進まない。今回はボディーチェックの他、ペットボトルチェックと言う物があり、中味を少し飲ませてから入場させているため、なかなか入場が捗らなかったのだ。
数十分経った頃、ようやく私達も中にはいることが出来た。チケットの半券を手がかりに、自分の座席を探し、着席した私達の目の前に噂されていた今回限りである特設ステージ、花道が見えた。
アリーナ席50列辺りまで細く真っ直ぐにえぐられて作られた特設ステージにしばし見入っていた。そんな時、後ろから肩を叩かれて我に帰った。振り返るとそこには一人の青年が立ち、両手には白いサイリュームが握られていた。
その姿を見て私は全てを悟ったが、青年の言葉を待った。
「白いサイリュームお持ちですか?」青年は微笑を交えながら私達に尋ねてきた。
私達は数ヶ月前に地元の雑貨店で購入していたので、「持ってますよ」と答えた。
青年は安心した表情を浮かべて、「アンコールでお願いします」と言葉を残して去っていった。
ふと周りを見渡すと、あちらこちらでサイリウムを配っている光景が目に付く。これは上手くいくなと思いつつ、どこか不安も感じていた。今回のコンサートはモーニング娘。単独ではなく、ハロープロジェクトである。モーニング娘。のファンもいれば、松浦亜弥のファンもいる。もちろんメロン記念日やココナッツ娘。カントリー娘。のファンもいる。松浦やメロン記念日を見に来た人たちにすれば、今回の安倍の卒業コンサートはもちろん知っている事ではあるが、安倍の為にこの企画に乗ってくれる保障はどこにも無い。疎ましく思っている人たちが居ないとも限らない。開演を前に私はそんな不安を感じていた。
そんな心配をしている私の耳にその不安を打ち消す声援が聞こえてきた。「なーち、なーち」安倍なつみに声援を送る声である。
最初は数人の小さな声だったが、次第に会場全てを巻き込む大声援にかわる。「なーち、なーち、なーち」私は実感した。ここに居る人たちは松浦亜弥や、メロン記念日などの枠にとらわれてはいない、安倍なつみの卒業を見届けるために集まった人たちであるという事を。
そんな声援の中、ステージサイドに設置された巨大モニターにオープニングを告げるCGが映し出された。会場に集まったオーディエンスのボルテージは上昇し始めた。
                  5話へ続く。
私が住んでいる岐阜から横浜までは、新幹線を利用すると2時間弱で着く。会場の横浜アリーナは、新幹線駅新横浜から徒歩5分の所にあり、昼過ぎに家を出ても今日の卒業コンサートでもある夜公演には間に合う計算である。
そのため、私は普段よりゆっくり起きて、遅めの朝食を取りながらテレビを見ていた。テレビの映像はモーニング娘。のレギュラー番組、ハローモーニングであった。私たちの地区では東京の放送局に比べ、2週遅れの放送であったため、そこに映る映像に若干の違和感を感じていた。
番組を半分ほど見た10時30分過ぎに私は横浜への出発の準備を始めた。一緒に横浜へ行く友人と、12時に名古屋駅で待ち合わせているため、11時過ぎには岐阜駅から名古屋へ電車で向かって行かなくてはならなかったためである。
バスで岐阜駅へ向かい、岐阜駅に着いたのが午前11時、そこからJRの快速電車へ乗り、名古屋へ着いたのが午後11時30分だった。友人は既に名古屋駅の新幹線待合室の中にいた。私よりも流行る気持ちを抑えきれない男がそこにいた。事前に購入していた新幹線の指定席券には11時57分発のひかりと明記してあったため、しばし待合室のソファーで友人と談笑を始めた。
友人の話では、彼の地元の駅の100円ショップで白いサイリュームだけが、全て無くなっていたらしい。都心部ならいざ知らず、こんな地方の街でも卒業コンサートの企画に賛同している人達がいることに少し感動を覚えた。
ふと、気が付くと時計は11時45分を回っていた。私たちは慌てて新幹線の乗降口へ向かった。
車内へ乗り込み、指定された座席を探し、着席したと同時に新幹線は横浜へ向うために走り出した。
しばらくすると車窓には綺麗な富士山が見えてきた。ここまでしっかりと富士山の全景が見えたのは久しぶりであり、興奮を覚えた。
新幹線は小田原を経由し、定刻どおりに新横浜駅に到着した。
列車を降り改札を出ると、今日の公演のチケットを求めるプラカードを持った人たちで駅前広場は溢れていた。そういえば、新聞か何かで今回の卒業コンサートのチケットがオークションで1枚80万円の値がついたことを思い出した。チケットを持っていない人たちが気の毒ではあったが、私も今日の公演にかける気持ちは並々ならぬ物を持っているため、彼らから目を逸らしながらその場を足早に通り過ぎた。気が付けば目の前には今回のコンサート会場である横浜アリーナがそびえ立っていた。会場では昼の公演の入場が始っていた。昼公演のチケットを持っていない私達は会場限定グッズを購入するため、会場横に設営されたテントへ向った。昼過ぎだったので売り切れているかと思っていたが、限定グッズのCDケースを無事購入する事が出来た。
買い物をすませた私達は、また駅へ戻る事にした。とりあえず昼の公演のチケットを持っていない以上、会場にいる必要が無かったし、晴れているとはいえさすがに1月、温かい場所を求めて私達は移動を始めた。
夜の部の開場が始る6時過ぎまで、駅でぶらつく事にした。
                        4話へ続く。
卒業発表直後は、各ホームページなどで議論を交わしていたファンも、時間の流れと共にその話題にあまり触れなくなった。いや、日々卒業へ向かって時間が経過している現実を隠そうとしてたのかもしれない。しかし、年が明けると各テレビ局は挙って安倍の卒業特集番組を放送し始め、ファンを現実へと引き戻していった。
番組では、彼女の涙を誘う番組構成をしていたが、安倍の目頭が熱くなる場面が見られても、決して泣いている映像は見る事は無かった。
なっちは強かった、いや必死になって堪えていた。自分自身が泣いてしまうと、他のメンバーにそれが伝わり、皆が泣き出してしまうのを彼女はわかっていた。笑顔で卒業したい!彼女の決意が映像に表れていた。

彼女の卒業が近づくにつれ、ファンの間でも最高の卒業式にすべく、インターネットを通じて準備が始っていた。北海道出身の彼女のため、当日アンコールで登場したら、その瞬間今まで色とりどりだったサイリューム、ペンライトをすべて白くしよう。辺り一面を雪景色にしようという企画が進んでいた。

そして、1月25日日曜日当日の朝を迎えた。そう、安倍なつみがモーニング娘。として最後のコンサートの日。その日、昨日までの曇り空が嘘みたいに全国的に晴れ渡っていた。
                         3話へ続く。
1月25日、午後8時過ぎ。
横浜アリーナのステージにはピンクのドレスをまとった女性が立っていた。そして、その女性を取り囲むよう白い光が無数に灯っている。
その日、彼女の為に会場に集まったファン15000人の心がこの光にあらわれている。
会場全体が白に覆われた光景を見て、中々彼女は言葉をだせない。彼女のマイクから聞こえるのはすすり泣きだけである。
すると会場からは一斉に彼女に声援が掛けられた。
「なーち、なーち、なーち、」その日、安倍なつみはこの光に導かれ、モーニング娘。を卒業していった,,,,。

昨年の7月28日代々木体育館、すべてはこの日プロデューサー つんく♂の言葉から始った。
ハロープロジェクトのライブ中のMCでVTR登場した彼の口から発表された言葉、「モーニング娘。安倍なつみは、来年の1月のコンサートをもって、モーニング娘。を卒業します。」
ついに来るべき時がきた....。私はそう感じた。
モーニング娘。の象徴である安倍なつみ。
彼女の卒業がついにやってきた。必ずやってくるものだとは解っていた。しかし、それを受け止める心の準備はしていなかった。
しかし、もっと辛かったのは、モーニング娘。のメンバーだったに違いない。メンバーにはライブ中に動揺させるのを防ぐため、数日前に発表されたと思う。その日、安倍は最も親しいメンバーでもある辻希美に{黙っててごめんね。}とメールを送った。

それから半年間、彼女は一日一日をかみ締めながらモーニング娘。としての日々を過ごしていった。

          2話へ続く。
資料揃いました。明日の日記新バージョンからスタートします。とてつもなく長い文書になりますが、気長に読んでください。
資料を集めているのでもう暫く、お待ちください。
来週には書きます。

詳しくは明日からの日記にて書きますが、感動のライブでした。
白いサイリュームの件、大成功でした。
辺り一面真っ白!その場に登場した安倍は感激でしばらく言葉を出せませんでした。
その後、彼女が歌い始めると、会場の天井からは白いものが舞い降りてました。コンサートスタッフもサイリュームの事を知っていて、降らせたものだったのでしょう。
最後の言葉の時、辻ちゃんが感極まりその場に立っていられなくなりました。メンバーに支えられている彼女に安倍は近寄り、優しく語りかけてました。

安倍なつみは、娘。にとって大切な存在であったと実感した瞬間でした。
詳しくは、明日の日記にて。
今日から横浜アリーナで2日間4公演のハロープロジェクトライブが始ります。
この公演の最終日、最終公演をもって安倍なつみがモーニング娘。を卒業します。
私はその公演にいきます。そして彼女の姿を目に焼き付けてきます。

昨日のミュージックステーション、FUNの卒業特集良かったですね。テレビ局の製作側がモーニング娘。の事を良く理解しているいい作りでした。
特にMステでは、ファンの間では禁句となっていた安倍の激太りについてタモリが触れていましたが、そんな台本を事務所側がOK出したのは、歌披露の時の辻ちゃんと安倍のツーショットが全てを表してますね。安倍が過食期になった時、辻が心の支えになっていたというのは有名な話。
FUNでも、辻ちゃんにコメントを求められてましたが、30分番組でコメントできる人が限定されている中で、飯田リーダーと良いコメントを期待できない彼女を選んだのもスタッフの細かな意図が感じられます。
明日、横浜アリーナ全体は真っ白に染まります。
なっちへファンが贈れる最高のプレゼントです。

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