小川真琴は、モーニング娘。のメンバーに選ばれた当初、同期メンバーの中で歌やダンスがずば抜けて良かった。しかし、彼女は伸び悩んだ。他の5期メンバーが急激に成長していく中で、彼女は取り残されて行ってしまった。いつしか彼女から明るさが消えた。
そんな彼女を立ち直らせるキッカケを与えたのが、安倍の言葉だった。
小川の安倍へ送るメッセージにはそんな思いがある。
「安倍さん、卒業おめでとうございます。」小川はすでに涙声である。
「ありがとう、真琴。」安倍はやさしく言葉を返えした。
「私が壁にぶつかって悩んでいる時に安倍さんが言ってくれた、『試練はそれを乗り越える事が出来る人だけに与えられるんだよ』の言葉がすごく励みになりました。...今度、安倍さんに会った時に、『まこっちゃん成長したね。』と言われる様にがんばります。見ててください。」
いつも励ましてくれた安倍へ、小川が贈る感謝のメッセージである。
「がんばるんだよ。」安倍はそう言うと、小川を抱きしめる。そしてモーニング娘。の安倍なつみとして最後の励ましの言葉をを小川に伝える。

メッセージを伝える順番が後に来れば来るほど、押し寄せてくる壮絶な悲しみと長く戦わなくてはならない。そんな中、石川は一人のメンバーの異変に気がついた。彼女の前で順番を待っていた辻である。
メンバーのメッセージを聞きながら肩を震わせながら泣いているのだが、立っているのが辛そうに見えるくらい泣いている。
石川は心配になり、辻の様子を覗き込んだり、話し掛けたりしていた。
そして辻が倒れないように、彼女の体に手を添えていた。
そんな中、卒業式は後半に入る。

こういった場では、暫し名言と呼ばれる言葉が生まれる。
昨年5月、保田圭の卒業コンサートの時も加護亜依の「無理かもしれないけど卒業しないで欲しい...。」は後々名言として語らえた。
狙って出てくる言葉ではない。素直な気持ちが言葉で表す事が出来た時に出てくるのである。この日も加護は自分の気持ちを涙ながらに、素直に伝えた。
「卒業、おめでとう。...言いたい事一杯あるのに出てこない....。また..一緒に納豆焼きそば食べに行こうね!」
彼女の言葉に優しく頷く安倍。
「あの,,,言えなかったんだけど、ずっと憧れの人でした...。」
ものまねや面白いことをテレビの画面では率先して披露する加護。
しかし、意外なことに彼女は恥ずかしがり屋でもある。
最後の最後でやっと言えた言葉だった...。
「大好き!」そう叫ぶと、彼女は安倍に抱きつく。
安倍はやさしく包み込み、加護の耳元へ顔を近づけて、マイクを通さない、二人だけしか知る事はないメッセージを送った。
加護は子供のように泣きながら頷くだけだった。

安倍の前に立った一人のメンバーを見て、彼女は思わずこう言った。
「おっ!よっちゃん、かっこいいね!!」
彼女の目の前に、金髪をバックにまとめた、美少年と見間違う男前メンバー、吉澤ひとみがいた。
私は彼女の表情を見て少し驚いた。
彼女は涙を浮かべていたのだ。
吉澤がモーニング娘。のメンバーになって泣いたのは、私の記憶では
平成13年4月15日大阪城ホールで行われた、中澤裕子の卒業コンサート以来であったと思う。
後藤真希、保田圭の卒業の時も笑顔で送り出していた吉澤。
しかし、今日はそれが出来なかった、彼女の中の本心がそれをさせなかったのかもしれない。
吉澤は、泣きながらも懸命にメッセージを伝える。
「安倍さん卒業おめでとうございます。...言葉じゃ言えないんだけど...安倍さんの毎日の姿を見て、一杯勉強になったし、がんばろうと思ったし、これからもそんな....安倍さんが大好きです。がんばってください!!」
時折、声を詰まらせながらも気持ちを伝え切った吉澤。
そんな彼女に安倍も感謝の気持ちを伝える。「ありがとう!」
涙は浮かべているが、満面の笑顔の安倍。その笑顔につられる様に吉澤の表情に明るさが戻っていた。

        14話へ続く。

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